| 裁判要旨 |
憲法第二九條は、財産權の不可侵を規定すると共に「私有財産權は正當な補償の下に、これを公共のために用いることができる」と定めている。從つて國家が私人の財産を公共の用に供するにはこれによつて私人の破るべき損害を填補するに足りるだけの相當な賠償をしなければならないことは云うまでもない。しかしながら、憲法は「正當な補償」と規定しているだけであつて、補償の時期についてはすこしも言明していないのであるから、補償が財産の供與と交換的に同時に履行さるべきことについては、憲法の保障するところではないと云わなければならない。もつとも、補償が財産の供與より甚しく遅れた場合には、遅延による損害を填補する問題を生ずるであろうか、だからといつて憲法は補償の同時履行までをも保障したものと解することはできない。食糧管理法によるいわゆる供出については、政府から買入代金の支拂として正當な補償がなされることは公知の事實であり、再上告人もまた、その受領を認めている。ただ本件の買入代金の支拂は供出後に行われたに過ぎないのである。それが憲法違反でないことは前記の説明によつて明らかであろう。されば政府が食糧管理法に基き個人の産米を買上げるには供出と同時に代金を支拂わなければ憲法第二九條に違反するとの論旨は理由がない。 |